アクアコミュニケーターの知恵
水と地球環境のはなし | Story of the global environment and water
水のメガネ
(7)水をたくさん買う国
食卓やスーパーマーケットにある食べものを水のメガネでのぞいてみると外国の風景がわっと広がって目がまわりそうになります。
これは外国産の食べものがとても多いということです。
純日本風と考えられる食べものでもじつは外国産というものもあります。
たとえば、水のメガネで「かけうどん」を見てみましょう。
かけうどんの材料のうち、ふるさとが日本のものが1つだけあります。
それは何でしょう。
うどんでしょうか。
いえ、小麦は多くを輸入に頼っています。
では、つゆに使われる醤油はどうでしょう。
醤油の原料となる大豆もほとんどが輸入です。
答えは、じつは、水なのです。
かけうどんの材料のうち、メイドインジャパンの材料はうどんをつくるとき、つゆをつくるときに使う水だけです。
日本は年間640億トンの食料を輸入しています。
食料を輸入するということは、間接的に、水を輸入していることです。
食料生産には、とてもたくさんの水を使いますから。
ですが、日本の輸入相手国である、中国、オーストラリア、アメリカなどが水不足であるということを考えると、これらの国から、いままでと同じように大量の食料を輸入できるかどうかわかりません。
では国内で食料生産を増やすことはできるでしょうか。
日本国内で食料生産に使われる水は、食料自給率40%の現在で年間570億トンほどです。
もし食料自給率を50%にしようとすると年間140億トンの農業用水が追加で必要になります。
でも、これだけの水はいまの日本にありません。
こうしてみると世界の水不足は日本の食料事情に直結しているといえます。
仮に食料輸入がストップしたら、日本人の食生活はガラリと変わるでしょう。
たとえば、ある日のメニューはこんな感じになります。
朝食は、
- ご飯軽めに1杯、
- ジャガイモ2個、
- ぬか漬け1皿。
昼食は、
- 焼イモ2本、
- リンゴ4分の1。
夕食は、
- ご飯軽めに1杯、
- 焼き魚1切れ、
- ジャガイモ2個。
これでおしまいです。
このメニューを食卓に並べて、水のメガネでのぞいてみました。
すると水のかたまりは770リットルです。
ファミリーレストランで頼んだどのメニューよりも少ない量で1日がまかなえてしまいます。
その大きな理由は、肉がメニューに入っていないからです。
日本人が水をたくさん食べるようになったのは、高度経済成長期からです。
その時期に食が西洋化していきました。
コメと野菜中心の食事から、肉類を多めにとる食事に変化したことが大きく影響しているのです。(続)
出典『水のメガネ』(橋本淳司)『OCONOMISSION2010』収蔵