アクアコミュニケーターの知恵
水をめぐる争いのはなし | Story of the battle for water
住民をおびやかす企業の水汲み
水不足、水汚染が進むにつれ、ボトル水市場は世界的に成長している。
その裏で、激しい水の奪い合いがおきている。
企業は世界各地で良質の地下水が湧き出る水源を買う。
もちろん日本も例外ではない。
そうしたなかで、いきすぎた地下水くみ上げを行う企業と、水涸れや地盤沈下、生態系への悪影響を懸念する地元住民や市民活動グループとのあいだでトラブルが起きるケースも多い。
たとえば、アメリカの五大湖の周辺では、企業が大量の水をくみあげが始まってから、水不足が発生し、地元の農家や漁師の生活を脅かすことがあった。
住民はくみあげ中止を求めるが、企業は拒否している。
裁判にもなったが、水枯れと企業のくみあげとの因果関係を証明することは地下水脈が複雑であるためかなりむずかしい。
世界各地で企業による水源買収が行われのは、近い将来、水が莫大な金を生むと考えられているから。
水不足が進行すると水の価値が上がる。
水の値段は上がる。
商品である以上、需要と供給のバランスに支配され、需要が多く、供給が少なければ高価格でも売れるようになる。
極論を言えば、たとえ価格が高くても、水を飲まなくては死んでしまうから、ほかに水がなければ企業の販売する水を買わざるをえない。
金をもっていれば水を買い続けることができるが、そうでなければ、水を買うことができなくなる。
そういったことから市民運動グループは、
「水は市場の原理に従属させてはならない基本資産、公共の財産であり、売買したり利益追求のために取引したりするようなものであってはならない」
「生命にかかわる水を商売にしてはならない」
と主張している。
水は基本的人権なのかどうかは、長年議論されてきた。
2010年7月28日の国連総会では、
「安全で清潔な水と衛生設備は基本的人権である」
という決議が採択されている。
192の加盟国・機関の総会中、
- 賛成122ヶ国、
- 反対0ヶ国、
- 棄権41ヶ国
という内訳。
棄権した41ヶ国には日本も含まれている。