アクアコミュニケーターの知恵
水が生んだ文化のはなし | Story of culture water gave birth
あなたの好きな水の音は何ですか
北茨城市の五浦海岸にある六角堂をご存知だろうか。
青海、白波に向う朱塗りの建物は、明治の日本美術院の主催者であり、思想家である岡倉天心が設計したものだ。
東日本大震災による津波で流出してしまったが、この4月に創建当時の姿がよみがえった。
28日からは一般公開され、復興の弾みになると期待されている。
僕の六角堂の思い出は、水の音とともにある。
天心が打ち寄せる波音を聞きながら瞑想に耽ったという建物の前に立つと、当たり一面は、あふれるほどの水音につつまれている。
小石や貝殻を運んでは引く波は、米をとぐような柔らかな音。
断崖に砕け散る波しぶきは、砂利をぶちまけたような激しい音。
2つの音に松林をわたる風の音が加わり、心地よいハーモニーを生む。
不思議なもので、水の音はどんなときでも心のなかにすっと入ってくる。
潮騒は苛立った気持ちを流し去り、あとにやさしい気持ちを残してくれる。
せせらぎは落ち込んだ気持ちを流し去り、あとに勇気を残してくれる。
だから僕は水の音が好きだ。
でも一口に水の音といっても、いろいろある。
数年前、
「あなたの好きな水の音はどんな音」
というアンケート調査(ミツカン「水の文化研究所」)が行なわれたことがある。
それによると、
1位は、
小川のせせらぎを連想させる
「サラサラ」だった。
2位、3位は
「トクトクトク」
「ゴクゴク」
という水を飲む音。
4位、5位には
水遊びの「バシャバシャ」、
川に石を投げた時の「ポチャン」。
その後、
- 「チョロチョロ」
- 「ザブンザブン」
- 「ピチャピチャ」
- 「ザーザー」
- 「ジャブジャブ」
- 「チャプンチャプン」
- 「ドボン」
- 「ジャージャー」
- 「タブンタブン」
と続いた。
自然の音を想像する人もいれば、水を飲む音、水遊びの音を想像する人もいる。
それだけ水と人間の関わりはさまざまなのだろう。
もしかしたら、そのときの気分によっても聞こえてくる水の音は違うかもしれないし、聞こえ方も変わってくるかもしれない。
復活した六角堂の前ではどんな音が聞こえるのだろう。