猪苗代湖に水がなかったころの話

 

 むかし、岩代(いまの福島県)の猪苗代湖に、まだ水がなかったころのお 話です。日がギラギラと照りつけるなか、この地を一人のお坊さんが通りかか りました。お坊さんはたいへんのどが渇いたので、どこかに水がないものかと 探していますと、水桶をもった美しい娘に出会いました。

 旅のお坊さんは、「娘さん、少しでいいから、水をわけてくださらぬか」と、 頼みました。ところが、娘は水がいっぱいに入った水桶をさっとうしろに隠し、 「水なんかありません」と、けんもほろろに断りました。

 お坊さんはしかたなく、また歩きはじめました。しばらくすると今度は、あ まりきりょうのよくない娘が、ほんのわずかな水でていねいに米をといでいる のに出会いました。お坊さんは頼みました。「娘さん。少しでいいから、水を わけてくださらぬか」。すると娘は、「それはお気の毒に。水は少ししかあり ませんが、どうぞ、いくらでもお飲みください」と言って、わずかな水をすべ てお坊さんに差し出しました。

 お坊さんは、その水を飲みながら考えました。「きれいな娘さんは心がみに くく、きりょうの悪い娘さんは心がやさしい。本当に世の中というのは外見だ けでは判断できぬものだなあ」

 お坊さんが、この地を離れた次の日のことです。不思議なことに、そのあた りはすっかり大きな湖になっていました。そして、きりょうのよくない娘さん の家は、水の便のよいところになり、反対に、意地悪をした娘さんの家は、湖 のなかの小さな小島になってしまいまいした。これが、いまも水を満々とたた えている猪苗代湖で、水の中の小島は翁島だと言われています。

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 福島県のほぼ中央に位置する猪苗代湖は大きさは国内で第4位(周囲55. 32キロメートル、最大深度93.5メートル、面積103.9平方メートル)、 の四季折々の雄姿を映すことから「天鏡湖」という別名もあります。

 入り組んだ岬、白砂青松の浜と変化に富んだ趣を見せ、福島県を代表する観 光スポットであり、最近では、夏は水上スポーツが盛んに行なわれ、また、冬 はシベリア白鳥の越冬地にもなっています。毎年8月には、湖上での花火大会 が開かれ、磐梯山をバックに夜空を焦がす大輪の花火に歓声がこだまします。 北西岸からは、猪苗代湖を船上から楽しむ遊覧船も出ており、湖唯一の島、翁 島や、湖上からながめる磐梯山を堪能することができます。

 上の伝承のなかに登場する旅のお坊さんは、修行中の弘法大師だと思われま す。各地の名水を調べていると、弘法大師ゆかりの水はたくさんあります。弘 法大師は平安初期の僧、空海の諡号です。真言宗の開祖で、真言密教を国家仏 教として定着させました。

 弘法大師と水に関連するの伝承はどの地域でも似ていて、全国行脚の際、喉 が渇いた弘法大師が人々に水を求めると、はるばる遠くから水を運んできて、 (上の伝承では手元にあったわずかな水ですが・・・)差し出してくれます。 気の毒に思った大師が、水のお礼にと地面を杖で突くとそこから清水が溢れだ した、というものです。

 石川県石川郡鳥越村の弘法池の水も弘法清水の一つで、この湧水はおう穴と よばれるナベ状の穴から湧き出ていて、本当に杖で突いて穴を作ったように見 えます。愛媛県東予市には「臼池さん」と呼ばれる弘法伝説の湧水があります。 杖を立てて念仏を唱えるとそこから水が湧きだしたと言います。喜んだ村人た ちが臼の形の井戸枠をはめたことから今でも臼池さんという親しみをこめて呼 んでします。

 神仏と水と人との関係が後世まで語り継がれ、水に親しみ、大切にされてい ることがわかります。


●猪苗代湖がわかるホームページ

福島県ホームページ
http://www.pref.fukushima.jp/

会津若松市ホームページ
http://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/index.htm

ふくしま観光情報〜猪苗代〜
http://www.fun.ne.jp/utsukushima/spot/inasummer.htm

(社)猪苗代観光協会
http://www.bandaisan.or.jp/